1点もの
初めて作家の作品を自分のお金で買ったのは、大学2年の時。
学校帰り偶然立ち寄ると、「ノーマン・ロックウェル 」の展示会があっていた。
30年くらい前、ミスドの箱の絵がその作家さんだったと思う。
子どもの頃、ミスドで働いていた母が帰りに買ってきてくれたドーナツよりも、箱の挿絵の方をよく見ていた。だから懐かしくなり、食い入るように見てると、ギャラリーに目をつけられますよね。。
大学生だからバイトのお金も大してないし、困ったなぁと思っていたけど、
でも一つだけどうしても引きつけられる絵があって
《シャッフルトンズ・バーバーショップ 》。
明かりが消えた閉店後の床屋さんの奥の部屋で、数名の高齢の男性たちが楽器を演奏している様子を、店の窓外から聴き入っているような描写。一歩引いたところから人間を見てるユーモラスなまなざし。それはもう、ひとめぼれでした。
でも、今思うとちょっと残念で、限定版とはいえ版画だった。
今は実家にひっそりあるけれど、はて、鑑賞する自分が変わったのか、当時のまま素敵な視点とテーマだけどそこに作家さんの息遣いや、ドラマティックさが感じられない。
いのちが吹き込まれた感じがしない。
1点ものの「絵画」の良さの一つは、作家の頭脳や情緒や色気すべてを、時が経ても失わずに、手元に置けることでもあるのかなぁと思う。
だから今は、1点ものの絵画を買うことにしている。
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