本との出会い
久しぶりのブログです。
今回は、かなり長文ですが、お時間ある時にコーヒー片手にでも、のぞいていただけたら嬉しいです^^
2020年で臨床美術士になり10年目を迎えました。開始当初は周りに、臨床美術を知っている人はおりませんでした。。誰もやっていないことや、新しいことを始めようとする時は、正直不安がつきまといます。自分はこれでいいのか、自分が信じているものさえも疑ってしまうことがあります。
そんな時に、ある作家の本と出会いました。
「レイチェル・カーソン」。ご存じの方も多いと思いますが「沈黙の春」の著者であり、アメリカの海洋生物学者です。
本のタイトルは『センス・オブ・ワンダー』。
幼児期から自然との関わりの大切さを説いた、レイチェル没後出版されたエッセイです。小さな子どもたちに関わる大人のひとりとして、この本は多くの示唆を与えてくれるものであり、分野は違えど信じてやっていることへ「そのまま進んでいいんですよ」って希望と勇気を与えてくれるような本でした。
その中でも、特に影響を受けた言葉がありますので、一部を引用します。
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わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。
子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。
美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。
消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。
レイチェル・カーソン 上遠恵子訳『センス・オブ・ワンダー』(新潮社,1996)
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読み終わった後に、不思議と「この原文が読みたいな・・」と思いました。
レイチェル・カーソン自身の言語で読んでみたいと思って、美しい自然の写真集として30数年後に出版された新版を、イギリスからお取り寄せしてみたのでした。
上記の原文を引用します。
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I sincerely believe that for the child,and for the parent seeking to guide him,it is not half so important to know as to feel. If facts are the seeds that later produce knowledge and wisdom,then the emotions and the impressions of the senses are the fertile soil in which the seeds must grow. The years of early childhood are the time to prepare the soil. Once the emotions have been aroused --- a sense of the beautiful,the excitement of the new and the unknown,a feeling of sympathy,pity,admiration or love --- then we wish for knowledge about the object of our emotional response. Once found,it has lasting meaning. It is more important to pave the way for the child to want to know than to put him on a diet of facts he is not ready to assimilate.
RACHEL CARSON『THE SENSE OF WONDER』(Harper,1998)
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手元に届いたものの、わたし、英語をすらすら読めなかったんだった・・と気づいたのですが..それでも、美しい自然の写真と、レイチェルの言葉の響きや、間、息づかいがそのまま感じられて、原文を読めて、とても満足したのでした。
特にこの一文が、一番好きです。
「it is not half so important to know as to feel.」
---「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない---
知識が大事という時代に育ってきたけれど、もっと大事なことを忘れてはいけないのよって、優しく力強く伝えてくれたように思ったのでした。子どもたちに関わる大人のひとりとして「言うは易く行うは難し」なんですが、日常で忘れてはいけないこと、育んでいくべきものの大切さを、心に中に留めておくだけでも違うのかなと感じています。
きっと、感性という土壌の上に、知性の花が咲くんですよね。ふかふかな土壌にしてあげたいなと思います。
今回は美術活動の土台であり、私のささやかなバイブルとなっている本のご紹介でした。
長文、読んでいただきありがとうございました。^^
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